「愛してる」
吐息のような、声のような、幾度となく吐き出される甘ったるい彼の呼吸が鼓膜に張り付いて消えない。
耳に温かい舌の感触を感じるたびにゾクゾクと快感に支配された。
「本当に愛してるんだ」
彼は両手の指を絡め合い、ぴったりと肌を合わせたまま、何度もわたしの胎に己を穿ち続けている。
耐えきれずわたしは何度も果てて、少し休ませてと口を開こうとすれば容赦なく唇を塞がれ、また激しい抽送が腹の奥を疼かせた。
「は、ぁ、や、休ませてっ…」
ようやく解放された唇を開いて酸素を吸い込み、息も絶え絶えに懇願する。
するとまた彼の唇がわたしの耳たぶを啄み、カリっと甘く噛んだ。
「嫌です。あなたが僕を信じてくれるまで、やめない」
敏感なところを何度も突かれ、背中を仰け反らせて再び絶頂を迎える。
ふたりが打ちつけあっている秘部はもうぐちゃぐちゃに溶けきっていた。
彼の熱さも、脈打っている猛々しい気配もすべて粘膜を通して感触が生々しく伝わってくる。
「好き…だいすきだから…許してっ!」
激しく揺さぶられながら、必死で訴えるわたしを彼はゆらりと微笑み眺めている。
まるでわたしの声なんか届いていないみたいに。
「僕に抱かれているあなたは、とても綺麗だ。だから嫌いだなんて――言わないで」
恍惚とした表情で彼は言った。
わたしはまた恥ずかしくなって目を伏せた。
乱れ切った髪も表情も声も何もかもをじっと観察する彼のまなざしが耐えられない。
「綺麗だよ。誰も彼もに――風真くんにだって、見せつけたいくらい」
は、と彼が短く息を吐き捨てて、ズンと最奥を突いた。
「いや、ぁ!」
両目からポロポロと涙が溢れる。恥ずかしさと何度も揺さぶられていることによる疲労で、頭はもう真っ白だ。
「嘘。あなたのこんな可愛いところ、誰かに見せてたまるものか」
相変わらず夜ノ介くんはぴんぴんしていて、すこし意地悪っぽく笑っている。
――夜ノ介くんは、ちょっと自暴自棄になってる。
回らない頭で、ぼんやりとわたしは悟った。
このまま自分が何もしなければ、ふたりの間に横たわる溝は埋まらない。
お互いが傷ついたまま、誰も救われない――そんな気がした。
わたしは深呼吸して息を整え、夜ノ介くんの肩にそっと両手を置いて、彼の動きを制した。
彼はわたしの行動に落胆したような表情を浮かべた後、また泣きそうに顔を歪めた。
「まだ、やめたくない」
縋るような彼の声に、優しく囁き返す。
「やめるわけじゃないよ」
そういって上体を起こしてそのまま彼を押し倒した。
「わたしが夜ノ介くんを愛してることがわかるまで、やめないんでしょ?」
彼のうえにのしかかり、雪のように白い彼の肌にそっと触れた。
なめらかで艶があり、時にたおやかな女にすら変貌を遂げる彼は、それでもやっぱりどうしようもなくおとこのひとの姿をしていた。
彼の焼け付くような熱視線が身体中に絡みつき、大きな手のひらに腰をつかまれる。
わたしは彼が導くままに身体を委ねた。