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ずるいね

姿見に映る買ったばっかのトップスを合わせた自分を見て、ムダに「よしっ」と意気込んだあと、なんだかその必死さがおかしくて苦笑した。週末はあのコと久々のデート。何食わぬ顔でOKしたけど、彼女からの誘いに俺の心は完全に舞い上がっていた。ダーホンや…

キャロルの女王はちょっと気怠げ

とにかく今年のクリスマスの計画は万全だった。決死の予約戦争を潜り抜け、夜景が評判のホテルと併設のフレンチレストランを予約したし、ずいぶん昔にフリマデートで話したウワサのペアリングも運良く用意できた。実は、高校を卒業してからの2年間は――イベ…

眠れない日々がまた来るのなら

細くカラフルなキャンドルの先から、パチパチと小さな花火が弾けては消える。色とりどりの光の向こうに、瞳を輝かせている彼女がいた。「ご卒業おめでとう」というメッセージとともに桜の花が描かれたプレートには、俺が数え切れないほどオーダーしたこの店の…

余白のない日々を額装して

とん、とん、とんと包丁が規則正しく野菜を刻み、鍋からは湯気とともに出汁の柔らかい匂いが立ちのぼっている。この世界に来るまで料理なんてろくにした覚えはなかったけれど、食べ物に頓着しない彼との暮らしはショウに生活の術としての料理を覚え込ませた。…

煙の恋

風呂上がりの浴室に淡く煙草の匂いが漂っていることに気づいた時、わけもなく胸騒ぎがした。ショウがパジャマに着替えておそるおそる脱衣所の扉を開けると、台所でウォロが古い換気扇の下で壁にもたれかかりながら煙草を吸っている。外は雨が降っていて、ベラ…

春泥に溺るる肌に陽が踊る

開け放した車の窓から吹き込む風に、ショウが目を細めた。あたりは野原一面に菜の花が咲き乱れ、彼女が乗っている軽トラックのエンジン音と、近くに流れる川のかすかなせせらぎ、車に備え付けられた古めかしいオーディオから流れる陽気な音楽と人の声だけが聞…

春にして君を離れ

白いチョークで規則正しい大きさの文字が書き連ねられていく黒板を、ショウは頬杖をついてぼうっと眺めていた。不意に、スカートのポケットの中でスマートフォンが僅かに震える。その感触に彼女は先ほどまでの退屈そうな表情から一転、ぱっと瞳を輝かせた。周…

常夏のため息

「天から落ちてきたひとびと」の直後のショートストーリーです。***体躯の大きな彼と一緒に狭いアパートの浴室で身体を並べているのはひどく滑稽だ。みちみちと音がしそうなほど肌を寄せ合って、わたしたちは向かい合っていた。「脚、開いてください」金色…

天から落ちてきたひとびと

!注意事項!※主人公の名前はショウ※メイン26までのネタバレあり※未プレイの過去作あり、ゲームもやり込めていないので所々間違ってるかもしれませんが生暖かい目でみてください※転生する条件など設定色々捏造してます※暴力的な性描写があります※村人…