やさしい雨が窓をたたいた - 3/4

「あぁ…だめ、あ゛ッくう、奥、だめ、なの!はあっあぁ…」
彼女の腰を掴み、逃げ場をなくして攻め立てれば、先ほどまでの恥じらいを含んた声とはかけ離れた嬌声がホテルの部屋に響いた。
「ほら、ここ好きでしょ?」
ズン、と容赦なく最奥に突き立てると、彼女の中のコリコリとした部分に当たる。
彼女はここを攻められると、ときおり獣のような声をあげて身体を震わせた。
「あ゛ッあ゛ぁッや、だっ」
それがたまらなく可愛いし、正直興奮する。
だけど本人はそれを気にしているみたいで、すぐに口許を手のひらで覆おうとするので、僕は彼女の両手を捕まえてシーツの上に押さえつけた。
「もっと声、聴かせて」
言いながら、僕はキスした折に付着した彼女の唾液がついた唇の端を舐めた。
彼女は泣きながらいやいやと首を振ったけれど、僕がまたピストンを始めると敢えなく陥落してしまう。
「かわいい」
自分の声音の甘さにも、我ながら驚く。

今、僕はどんな顔をしているのかな。
きっと目も当てられないくらい欲情剥き出しの視線を彼女に向けているんだろうな。
「ひうっ」
容赦なく彼女の弱い部分を攻め立てつづけていたので、彼女は短く叫び2度目の絶頂に達した。
ぎゅ、と締め付けられて、油断するとこっちもイキそうになる。
だけど、せっかくのセックスをこんなに簡単に終わらせるなんてごめんだ。

手のひらにすっぽり収まる彼女の小さな顎をつかまえて、はあはあと荒い呼吸を繰り返す濡れた唇に噛み付くようにキスすれば、彼女はびくりと身体を跳ねさせた。
逃げ腰になっている彼女の舌をとらえ、溶けるようにやさしく、けれど執拗に、絡ませあう。
粘膜越しに彼女の身体の中が痙攣するように震えているのが伝わってくる。
けど、僕は休むことなく腰を打ち続けた。
「むうぅ」
口を塞がれたままの彼女が不服そうにくぐもった声をあげたので、僕はしぶしぶ彼女の唇を解放した。

上半身を起こして、彼女のお腹にそっと触れてみる。
このなかに僕がぜんぶ入っているなんて、ちょっと信じられない。
僕を咥え込んでいる彼女の下腹部をそっと押したら、彼女はまた身体を震わせ、逃げようと腰を浮かせた。
その反応に気を良くした僕はまた彼女の腰をがしりと掴んで引き寄せた。

「いの、りくん…が、こんなにねちっこいなんて、しらなかった」
泣きそうな声で彼女が言った。
「君こそ『ずっとしたかった』んじゃないの?」
「ちょっと想定外なの!」
ほんとはわたしがリードしようと思ってたのに、と彼女が頬を膨らませているので、僕は可笑しくて声を上げて笑った。

「ずっとそれじゃ困るでしょ」
あやすように彼女の髪を撫でれば、じとっとした目つきで見つめ返された。
「それは…そうだけど」
彼女は気まずそうに語気を弱める。
僕はだんだん不安になってきた。
――ひょっとして、痛かったりしたのかな。がっつき過ぎって思われた?
「痛かった、かな…」
僕が訊けば、彼女の顔はさっと真っ赤に染まって恥ずかしそうに視線を逸らした。
「ちがうの」
小さな声がかすかに聞こえる。
「すごく、気持ちよくて、変な声でちゃうし…いのりくんの前ではもっとちゃんとしていたいのに…」
幻滅しないで、と懇願する彼女の声は震えていた。

幻滅なんて、ありえない。
彼女はどんなときだって綺麗で可愛いし、彼女がはずかしいと思っている姿ももっともっと見たい。
けど、そんな当たり障りのない言葉で繕っても彼女には伝わらない気がした。

――必死なんだ。僕も彼女も。
そう思うと、自分の感じていた自己嫌悪も、サイテーだった雨の中のドライブのことも、なんだか急に愛しい出来事のように感じられた。

「僕は、君のことが本当に好きだよ」
そう言って彼女にそっと口付けた。
「好きな人とのセックスがこんなに気持ちいいってこと、教えてくれてありがとう」
彼女は真っ赤な顔のままで僕の顔を目をまん丸くして見ている。
「だからさ…もうちょっとだけ、つきあって」
僕が彼女の耳元で囁けば、彼女はさらに顔を赤くして、口をわなわなさせたのち、ちょっと戸惑いながらも頷いた。