Darling in my Umbrella - 4/5

彼らが生活に必要なものを一通り購入し終えた頃には、時計は14時をまわっていた。
「さすがに買いすぎたね」
「重い…これ、ほんとに持って帰るの…?」
「世田介くん!?やる気失わないで!」
「…ぜったい、家の近所の八百屋とコンビニでもよかった」
「でも安かったでしょ?!」
ささいな口喧嘩をしながら、帰路に着く。

炎天下のなかで重い荷物を運び、長い坂を登り、ようやくマンションの部屋に辿り着けば、世田介はすっかり疲れきっていた。
「つかれた…もう無理…」
八虎がせかせかと購入品を冷蔵庫に詰めていくのを尻目に、世田介はそそくさと部屋のクーラーをつけ、ベッドにダイブする。
「さすがに炎天下のなかよく歩いたよね」
八虎が余裕の笑みを浮かべてダイニングからひょっこり顔を覗かせるので、世田介は信じられない、という目で彼を見返した。
「矢口さんは、本当に徹夜したのかってくらい元気だよね」
「そんなことないよ!このあとさすがにちょっと昼寝したいし…」
「そうしよ。俺、もう限界…」
世田介はいつの間にやら部屋着に着替え、ブランケットにくるまっている。
「あ!ずるい、俺も!」
そういって冷蔵庫に食材を仕舞い終えた八虎が、勢いよく世田介のいるベッドに飛び込んだ。
「重い…」
目を瞑り、今まさに眠りにつこうとしていた世田介は顔を顰める。
「だって世田介くんが先に寝ようとするんだもん」
「どっちが先に寝ても変わらないだろ」
「世田介くんが先に寝たらその…できないでしょ、腕枕とか…」
あとは、キスとか。
「…」
流石の世田介も眠そうに瞼を開けて八虎を見た。
その瞳はさも「面倒なことを言い出すな」とでも言いたげに不機嫌そうだったが、それとは裏腹に彼は八虎の額にちゅ、とキスを落とし、コテンと頭を八虎の腕の中に預けた。
「…これで眠れる?」
「…うん」
八虎の返事を聞くなり、世田介はすぐに深い眠りへと落ちていった。
その寸前、柔らかな唇の感触が頬をかすめていったような気がしたが、彼は静かな微笑みを浮かべただけで、何も言わなかった。