水面の彼
一週間前、彼女と初めてキスをした。想像していたよりずっと薄くて柔らかかった彼女の唇と、触れ合っていたふたりの肌の感触が頭から離れない。オレは沸騰しそうな頭を冷やすように、水泳の補修が終わったプールの水面に頭を突っ込んでいた。水泳の成績が悪か…
文章行マリ
グーテンベルクの銀河系
本多くんの部屋には背の高い立派な本棚がある。そこには、背表紙からそのずっしりとした厚みを感じる図鑑や専門書がずらりと並んでいた。「それ、プラネタリウム?」薄暗い光の漏れる窓にピシャリと遮光カーテンを引き、なにやらごそごそと準備をしている本多…
文章行マリ
待ちきれない、日々のきらきら
――ダーホンが今、恋をしているらしいよ!元はばたき学園中等部出身の女子たちのあいだで、そんな噂話がまことしやかに囁かれていた。当のオレはもちろんそれを知っていた。初めて知った時は、そりゃ少しは驚いたけど、でもまだこれは根も葉もない噂話。彼女…
文章行マリ