時計塔のヴィクター・アルタモント講師 第3章:林の中の象のように
任務を終え、ふたりが家に着いたのは夜明け前だった。立香は温かいシャワーを浴びたあと、肌や髪の手入れもそこそこに、バスローブ姿のまま事切れるようにしてこんこんと深い眠りに落ちていった。彼女がふたたび目を覚ました頃には陽が傾きかけていた。窓から…
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時計塔のヴィクター・アルタモント講師 第2章:寒村の任務
「今度の週末だが、君に仕事を手伝ってもらいたいんだ」ある日のこと、立香が夕食の支度をしていると、帰宅したばかりのホームズがキッチンのドアを開けて開口一番にそう言った。「休日出勤なんて、めずらしいね」「いや、依頼人は時計塔だが内容は講師でも教…
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時計塔のヴィクター・アルタモント講師 第1章:英国へ
ホームズは食卓に並べられたカトラリーを手に取り、食事を始めた。彼は空腹のままにフォークとナイフを無造作に操ったが、幼少期に叩き込まれたのであろう窮屈なテーブルマナーが染み付いたその所作は、粗雑さのなかにも隠しきれない品の良さが漂っているよう…
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甘い運命
それは、ちょっとした出来心だった。家事の最中、立香はリビングにある戸棚のひきだしが中途半端に飛び出しているのに気がついた。中が気になってそのまま引っぱり出してみれば、思いのほか軽い。空なのかしらと中を覗き見ると、そこには古ぼけた…
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花園に雨が降る
彼がマスターの密かなルーティンに気がづいたのは、ちょうど一ヶ月前のことだった。カルデア内のレクリエーションルームのひとつに、ピアノやオルガンなどの楽器が設られた部屋がある。音楽にゆかりのある英霊は限られているし、楽器が西洋音楽に…
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ブルーの準備はできている
「ホームズ!!」ほとんど悲鳴のような声をあげ、真っ青な顔をした立香が駆け寄った壁際には、長身の男が力なくうなだれていた。いつもきっちりと着こなされている糊の効いた上質なシャツははだけ、不健康な白い腕には無数の小さな穴のような傷跡があった。も…
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