ホムぐだ

甘い運命

 それは、ちょっとした出来心だった。家事の最中、立香はリビングにある戸棚のひきだしが中途半端に飛び出しているのに気がついた。中が気になってそのまま引っぱり出してみれば、思いのほか軽い。空なのかしらと中を覗き見ると、そこには古ぼけた…

花園に雨が降る

 彼がマスターの密かなルーティンに気がづいたのは、ちょうど一ヶ月前のことだった。カルデア内のレクリエーションルームのひとつに、ピアノやオルガンなどの楽器が設られた部屋がある。音楽にゆかりのある英霊は限られているし、楽器が西洋音楽に…

ブルーの準備はできている

「ホームズ!!」ほとんど悲鳴のような声をあげ、真っ青な顔をした立香が駆け寄った壁際には、長身の男が力なくうなだれていた。いつもきっちりと着こなされている糊の効いた上質なシャツははだけ、不健康な白い腕には無数の小さな穴のような傷跡があった。も…